〜物語〜

 

 

 

 思うに、この『世界』なんてものは、絶対に『現実』だと言い切る事の出来ないものなのではないか。

 そこで暮らす『登場人物』たちだけがそう思い込んでいるだけで、実際この『世界』は誰かが作った『物語』の一つに過ぎないのではないか。

 始まりから終わりまで、何から何まで決められた、決められ尽くした一つの『物語』なのではないか。

 私はそう愚考する。

 

 

 果たしてそれは、どうなのだろう?

 

 

 その『物語』は、この『物語』は、果たして面白いのかそうでないのか。

 作者も当然気になるところではあるのだろうが、『登場人物』である私としても実に知り得たい事だ。

 

 

 どう、キミ? この『物語』は面白い?

 

 

 尤も。今キミが読んでいるのは、最初の方、本当に最初の方の壱頁目、壱行目ではなく。途中の一頁目、途中の壱行目であるのだろうが。

 

 私には『過去』がある。

 しかし、その『過去』がこの『物語』に書かれている事は恐らくない。大体の『物語』には、『登場人物』の生まれる場面など書かれていないのだから、無駄だと思われる場面は省いているのだから。

 読者が考えるしかない。・・・・・・・・・いや、読者は『読み物』とでしか認識していないのだろうから、書かれていない事にまで頭を働かせはしないだろう。

 終わればそれは終わり。

 その先など少しも考えない。

 私たち『登場人物』も、普通に生まれ、普通に生きて、普通に死ぬ。などそんなこと、思いもしないだろう。

 

 

 『読者』も、『読者』の『世界』もまた、『物語』の一つである事も考えうる。

 だってそうだろう? 『登場人物』たちは皆、『物語』を『現実』としか認識していないのだから。『現実』を疑う事などしないのだから。

 マジックをマジックでないと、始めからトリックなどない正真正銘の異能なのではないかと。そんな事、誰も思わない。

 

 

 人々は、『世界』を『知る』事を、『放棄』している。

 

 

 『現実』を疑わないという、『現実逃避』

 

 

 

 

 

 ───────世界って、何?