白で統一された部屋に、少年と男が向かい合うようにして座っている。
男はテーブルに置かれた紅茶を手に取り、一口含むと言った。
「さて、今日はキミに『普通』を説明してもらおうか」
〜普通〜
「・・・・・」
少年は黙って紅茶を口に含んだ。
「学校やニュースで多くの人が口々に言う、『普通』についてキミはどう説明する?」
少年はカチャリ、と紅茶のカップを置きしばし思考する。
そして口を開いた。
「人間というのは個々が別々のものだが、俺たちはそれを普通の事と認識しているよな?」
「そうだね」
ニコニコとした笑みを貼り付けながら男が返す。
「じゃぁ、それを大多数でなく、一つのものを基準として考えたらどうだろうか。
例えば、自分自身。当然ながら、自分以外は全部別ものだ。これはヘンという事だろう? 自分が基準なんだから。
そうすると自分は普通で他はヘンという事になる。だが、他の誰か例えばアンタだ。アンタを基準にしたら俺はヘンでアンタが普通という事になる。そうすると矛盾が生じるよな。アンタがヘンで俺は普通。俺がヘンでアンタは普通。って風に。
でも、現実はそうにはならない」
そこで区切ると少年は、紅茶を一口含んだ。
「何故か、それは個人個人が他者に
近しい。似ている。それは他者と自己は決定的に違うという現実を薄めるには十分だ。だから、自己が普通ならば他者も普通となる」
「要するに『普通』というのは他者と同じでありたいという人間の弱い心が生み出したものだと、キミは言いたい訳だね?」
「そこまでは言っていない」
「ふむ。まぁ、どちらにせよ、これでは『普通』という事を説明した事にはならないね。というか意図的に
ギクリ、という風に少年は身を固めた。
「・・・・・・さぁてなんの事かな? それに俺は『普通』について説明するとは言ってない」
開き直った。
「ふむ。それもそうか」
紅茶を飲みながら、納得する男。
「じゃあ差し詰め、さっきのは
それじゃ、今度は正真正銘キミの『普通』について説明してもらおうか。因みに拒否権はないよ」
ちっ、と小さな舌打ちが部屋に響いた。男は気にしなかった。
「俺にとっての普通は、普通ではないという事だ」
「それはどういう意味かな?」
「俺は他者にしてみればヘンって事さ。アンタと同じにね」
「それは心外だな。私はいたって『普通』だよ。それはキミにしたってそうだろう?
自分の事を『普通』だと思わない人間なんていないんだからね」
男の諭すかのような口調に、少年は嘲笑を浮かべ、こう言い放った。
「はん。『普通』なんてクソ喰らえだ」
「それには私も同感さ」
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恐らく、最初にして最後のあとがき(何故か? ぼくはあとがきが苦手だからさ。いや、戯言だけど。
・・・・・なんか、わけ解らないですね。すいません。
一応これでも、解りやすくしようと努力はしたんですけど・・・・・日々精進ってとこですか。
それで、要するに、ぼくが言いたいのは「普通なんてものに意味はない」といったとこでしょうか。いや、なんか違う気も・・・・。
「普通な人など居ない」かな?
まあ、読者の方々はあまり深く考えないで下さい。こういう考えは、中々伝わりにくいものですし、ね。
では、他作品もご期待下さい。