〜万能〜

 

 

「ねえ、キミ。キミは万能な人間をどう思いますか?」

 

「・・・・・」

 

 唐突な彼女の問いに、ぼくは何も答えなかった。答えられなかった。

 

「私はね。幼い時から何でも出来たんだよ」

 

「・・・・・」

 

 何故なら。

 

「まさに万能ってぐらいにね」

 

「・・・・・」

 

 静かに語る彼女は、ぼくが知る限り。

 

「でもね。万能ってことは、いい事じゃないんだよ」

 

「・・・・・」

 

 今まで。

 

「だって、何でも出来るんだよ? 出来ないことが、まったくないんだよ?」

 

「・・・・・」

 

 誰にも。

 

「つまりね。努力する必要がないんだよ」

 

「・・・・・」

 

 見せたことがない。

 

「努力する楽しみが、ないんだよ」

 

「・・・・・」

 

 表情かおをしていたからだった。

 

「みんなは努力なんかしたくないんだろうけどさ」

 

「・・・・・」

 

 彼女は。

 

「私は、したいよ」

 

「・・・・・」

 

 泣いていた。

 

「たくさん頑張って、周りと助け合って、満足いかなくてもいいから、結果だして、それで、そのうえで、褒められたいよ」

 

「・・・・・」

 

 声を出さずに。

 

「ねえ、どうして私は、万能なのかな?」

 

「・・・・・」

 

 泣いていた。

 

「どうしてみんなは、そんな私を、羨むのかな?」

 

「・・・・・」

 

嗚咽も漏らさずに。

 

「みんな、可変しいよ。狂ってるよ」

 

「・・・・・」

 

泣いて、いた。

 

 

 そんな彼女に

 

 ぼくは

 

 とうとう

 

 何も

 

 言うことが

 

 出来なかった